Italy maison, 大変素敵な Over coat / Diary629
23.11.2018

 

 

紳士服の世界で大衆的に周知されてはいない事実に深い哀しみを憶えると同時に、純然たる紳士服の御姿でファーストコンタクトを叶えられた実際に深い感動を憶えました。ミラノコレクションで栄光を過ごした1980年代から1990年代の僅かな時間 Maniac maison の紳士ポジションと、絶大な評価を獲得する事となった裁断の美しさ,カラートーンの操縦,線の美しさを演出する生地量,総じて同氏のつくる女性のためのコートは本当に本当に素晴らしく、此方で袖を通させて頂いた際、ノーパッティングにイージーフィットを得意とした同氏の女性服ですのでなんとか着れるのではないかとポジティブベクトルを注ぎましたがやはり無理。そういう事で限られた年代の生産事実が出逢いを極めて困難にする紳士用のコートに絶望していた心持ち、この度の御縁を素直に喜びたいと憶います。

 

 

Romeo Gigli / ロメオ・ジリ

 

 

 

 

1999年A/Wファーストコレクションで発表されたMartin Margiela氏のウール&アルパカを組成とした素晴らしきショートコートを弊店で綴らせて頂いた2016年1月22日と2017年9月29日。簡単に忘れぬよう,永い事決して忘れぬよう,0距離にて体感し、脳の奥深くまで浸透させていた上記個体が記憶ホルダーの中枢から突如として掬い上げられる事と成った本作との御縁。必然的に発生した其の記憶の揺り起し運動は、本作を着用した瞬間でも触れた瞬間でもなく、視た瞬間のオートモードで御座いました。素晴らしいコートを追い求めてフレキシブルに情報精査と情報更新を繰り返すのはわたくしだけではないはずですが、素材の組成が為すあたたかな触れ心地、身頃の裏地はコットンの総張り、袖はレーヨンの辷り、制御性のみが息づく至極シンプルな面持ち、匿名性、これは上澄みではあるまいかとインプットした2回の検分の末,Martin Margiela氏の比類なき其のショートコートに、それはもう、ほとんど完璧なほど、一線並列する事と成ったあまりにも素晴らしく、大変素敵な Over coat で御座います。

 

 


 

大衆のためであるのでしょうが誰のためでもなく特定者もおらず、故の自由提案が叶うプレタポルテの素晴らしき世界で放たれる自由表現は無制限の中にある規律があるからこそ美しいと憶いながら、そのフィジカルで厳格な規律と本作の力強い匿名性もまた99aw別作に近しい感動を受け取る形となりまして、袖を通しても不在であり、ましてや不存在に近い自然状態で個が尊重される大いなる 偉力 というのはそうそうあるものでは御座いませんで、それがコートとなれば尚更で御座います。しかしながら自由裁量の領地でこれほどの凝縮体がミラノコレクションを彩るとは憶えず、ただただ女性を華やかに魅せる紳士性と10名の様々な顔つきの男性が同じような様子で着ることを許された素晴らしき匿名性と所有者のみが知る圧倒的なる圧倒性を意図して注ぎ込んだRomeo Gigli氏の魔法を感じずにはいられず、ランダムに織り上げられた天然羊毛の厚み、テクスチャーの柔らかさと雄雄しさは 極上 と申し上げても差し支えなく、特質的なアプローチや個性感もなく、凄まじき制御性と統制力によってまとめあげられた最小限のカッティング,襟,スラッシュポケット,肩線から直線的に伸びるアームライン、身頃裏地のコットンのあたたかさと、テーラードの上からでも気持ちよく通せる袖裏地に配置されたレーヨン、至極純粋な実際力によって骨組みされた素晴らしき,素晴らしき Over coat の大いなる其の偉力は、ファッションの一線に佇ませるには勿体がないと感じさせる程の習慣性と完結力を憶える Over coat by Romeo Gigli この度の御縁を、わたくしは素直に喜びたいと憶います。

 

 

 




 


90s Romeo Gigli wool coat

 

 

 

 

 

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