昨日は予想を超えた寒さに少々怯えまして、そうなると想起させるは暖かなセーター、という事で、心に留まっていた一品を気持ちよく書こうとスロットルを外しておりましたが、さて、本日を迎えてみれば残暑の足掻き。
風邪も流行るわけです。皆様、重々お気をつけを。
ヨーロッパ大陸においてニット・クオリティが突出しているのは太平洋に面していない大陸ならではの寒さ / 気候に起因するのでしょうが、それぞれの特色があるとて基盤となるは “暖の確保” が然りと存じます。特に英国,アイルランド地方では優れたニッターも数多く,独自に根付いたニット・カルチャーが指折りの特有性を備えるという事実も周知の通り。確実に暖をとるためしっかりと身体に沿わせるフィッティングアプローチは、2サイズ程大きなセーターを着用しながら湿気と油分を吸わせ、ぬるま湯でゆっくり洗いながら注意深くシュリンクさせていき、確実に身体に沿うようフィットさせていく丁寧な向き合い方も学ぶべき伝統性と憶います。厳しい冬の寒さや湿気にも大いに耐え得る重厚な編み、強力なコシ、その防御性と防寒性のレヴェルを確実にする混紡精査も当然。
その質感と実際的ムードを獲得するため,あらゆるお素材やマテリアルで挑もうと、 手編み の要素や性質は不可避のように憶いまして、不規則かつ変則的に生じる “歪み” や “緩急 ” それは大方、製品としてフィニッシュした実像に留まらず、習慣的に向き合い続ける過程において獲得される種類の歪みと緩急が引力を生み、着丈や袖丈の歪さ,歪形、その者の標準的生活性における癖から発生する擦れ、生地への摩擦、プレッシャーによる編み目の変化等、意図して叶う区分ではなく、パーソナルピースに昇華していく向き合い方 / ハンド・ニットの魅力を、現代モードには一致しないアルチザンな域で提案し続けたアントワープ鬼才の仕事がいかに素晴らしいか、メゾンのフィルターを通した表現として伝統性を重んじる人物は何名居るか。世紀末に優秀なニッターを求める世界的な動きは、ニットという存在の重要性(商業的重要性含め)と、素材本来の魅力のみならず技術分野における “ 質 ” も少なからず露出する / 誤摩化しがきかない / デザインに限度性が伴いやすい区分である事、想像し得る内容と憶います。
さて、そのようにして英国伝統性やセーター(ジャンパー)との付き合い方を見事に注ぎ込み,成功させた本作は、同社といえば兎に角ニットが素晴らしいと周知させるに至った具体性、同氏のニット表現と純然たる情熱がギュッと凝縮した個体である事、ゲージが不規則的に切り替わる詳細は、視覚的美しさのみを求める施しではないほど、あるいは長い歳月を共に過ごしてきた種類の不規則性であり、フィールドバックというワードも適合か怪しまれるほど “ 道具 ” として限りなく精巧なもんで、そのうえ、限定的な地方における座った際にヒップまでしっかり暖めるため着丈は長く設計する伝統性をほんの少しの躊躇もなく採択する実例は、99年メンズファーストコレクションにおいて某デザイナー氏が初めてアランセーターを発表した内容と同等。骨にフィットする身幅や肩、そしてロングスタイル。現代モードとは真逆をいくニットクリエイションであり、90年代の揺り起しが行われているタイムリーな現代世界でさえも、ハッキリと申し上げまして、異質で御座います。
故に、本作においてはいかに素晴らしい個体かは置いておいて、ブルゴーニュワイン樽に2年浸け込んだようなボルドー色である事実も置いておいて、湿気と油分を確保したようにしっとりと形状的で,祖母の手編みの其れの如く荒々しくも温もりが有り、マテリアル混紡率を数%の割合でコントロールするドリス・ヴァン・ノッテン氏の貪欲な表現であることも横目に、 暖をとる というシンンプルかつ究極の目的のため御選定を頂きたく存じまして、ヨーロッパほど寒さに厳しくないシティライフへのご提案として僭越ながら、室内ではアウトに、人様に会う際はタックインというギアを設けて頂くのも粋な事。寒さに怯える暁には、タートルネックを折らねばならぬ理由も御座いませんで。
early00s Dries Van Noten turtle neck knit jumper
(styling with 50s Levis 501zxx)
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
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