私文 / Diary559
4.7.2018

先日の小林店長の Diary を読み、自宅の縁側にて再び心から寂しい気分となりました。在りし日に友人の松澤 匠くん 【 後述1 】 が連れてきてくれた頃 ( 当時は LAILA VINTAGE ) から既に窓の外で生い茂っていたヴァージニアクリーパー。それから時を経て私が LAILA でお客様をお出迎えする立場になってから既に10年以上経ちますが、外を見れば常にそれが在りました。春が近づけば葉がつき始め, 気温の上昇と共に茂り, 夏の終わりから枯れ始め, 徐々に紅葉し行く末枯れ, そして再び緑が息吹く。移ろいゆく四季を明確に現わしてくれ、何より常に穏やかな気持ちにさせてくれた “ お向かいさん ” が無くなってしまうという事実は、宇多田ヒカルの新譜 【 後述2 】 との出逢いで幸せな気分であった私を一挙に悲しみの渕へと沈めてくれました。まずは LAILA VINTAGE の宮本店長が “ どうやら… ” と教えてくれ、その後に界隈の情報通のお方が教えてくれたことで疑惑は確信へ。お向かいさん、並びに向かってその隣がどうやら商業施設の類へと生まれ変わるそうです。

SURR はその立地ゆえいわゆる極めて入りづらい空間なのだと思います。しかしながら御入店頂くとお客様の中にはゆっくりお過ごしくださる方がいらっしゃるのですが、考えてみるとお向かいさんの景色, ヴァージニアクリーパーの色や空気がその大きな要因になっているのではないかと思います。そして何よりもお出迎えする我々にとってその景色は常に大きな心の支えでした。SURR においてまず大切にしていることはお客様方に可能な限り豊かなお心持ちでゆっくりとお過ごし頂く事でして、そのためにお出迎えする我々自身が豊かな心持ち, 立ち振る舞いを行うことを信条とさせて頂いているのですが、考えてみるとその信条を築くこととなった要因の一つはヴァージニアクリーパーの粛々とした生命力 だったのかもしれません。

私自身は基本的に楽天的であり悲しい気分も割合すぐ切り替えることが出来る, 意識的に切り替えるようにしているのですが、この度のさよならはあいにくながら不可でした。LAILA が設立して 16 年目。その期間だけでもこの界隈は様々な変化がございましたし、そもそも昨今は都心部各所で大きな変化が訪れておりますので、本件もその一つなのだと思いますが、まだ寂しい気持ちは消えそうにありません。しかしながら楽天的かつ前向きを個人信条としておりますので、限りあるお向かいさんの風景を楽しもうと思います。はてさて、極めて私的な綴りとなってしまいました。お目汚し失礼致しました。

 

 

 

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【 後述1 】
『 ドメ、LAILA って店があるらしいぞ 』 そう言って私をヴィンテージの世界に誘ってくれた人物、松澤 匠くん。それまで古着という文化しか認識していなかった私は、ヴィンテージという文化に衝撃を受けそれを志し現在に至ったのに対して、彼は役者の世界を志し現在に至っております。悪い意味ではなく用事が出来ないと連絡を取らないのでそういえば全然会っていませんが、私は定期的に彼の姿をテレビなどで拝見しており おっ匠ちゃんじゃん などと独り言ち、彼が Aスタジオ に出た際、鶴瓶さんにどんな話をしようかとイメージトレーニングしているのです。
霧ヶ峰50周年ムービー「僕の人生に吹く風」【三菱電機公式】

なお、先々公開の映画 『 SUNNY 強い気持ち・強い愛 』 に御出演だそうです。皆様ご興味くださいませ。

 

 

【 後述2 】
私はタワーレコード渋谷店が大好きでして、定期的に素敵な出逢いを求めては訪れ、いわゆるジャケ買いをしております。その日 6/27 は敬愛する 現代音楽家 Nico Muhly の新譜がございましたので意気揚々とレジに向かいましたところ、カウンターの上に 宇多田ヒカル の新譜が鎮座しておりました。その時は時差ボケ【 後述3 】でややばかり朦朧としていたこともあり、気付かぬうちにジャケットを眺めていたようでして、おもむろにカウンター内の店員さんが 『 そちら、本日発売です 』 とおっしゃられたのですが、その後に続いた一言に私の心は射抜かれました。  『 宇多田ヒカルはデビューアルバムが 「 First Love 」だったのですが、20年目に発表したこちらが「 初恋 」 というタイトルなんです 』  短くなく長くない、単純かつ明快で、純然たる真実に基づくご説明。 “ これこそまさにお客様に御提案するという意味での接客だ ” と私は本当に感動致しまして、購入させて頂きました。
これまで彼女の曲をしっかり聴いたことが無かったのですが、素晴らしい才能をお持ちの方だということを今更ながら知ることが出来ました。沢山聴いております。個人的には 「 嫉妬されるべき人生 」 が好みです。曲自体もちろん魅力的ですが、 嫉妬されるべき人生 という言葉の響きに大変な渋みと凄みを感じずにはいられません。

 

 

【 後述3 】
先日、新たな出逢いを求める旅より帰国致しました。今回もヨーロッパにおける観光的な意味合いでの御報告はございませんが、SURR においての御提案という意味合いでの御報告は喜ばしいことに沢山沢山ございます。トップメゾンにおける当時の挑戦的創造や、お披露目のため創られた純粋な1点もの【 後述4 】、意欲的なメゾンの姿勢から生まれる秀逸作、一つの区分においてそこに属していながらもくくり切ることのできない歴史が生んだ不確定的要素【 同後述4 】、個を明確に感じるアンティークピース / ヴィンテージピース、製作者不明な圧倒的才覚の品々など。 “ 誰にも気付かれることはないんだ。自分のものにしてしまえ ” という孤独な悪魔のささやきに幾度も打ち勝ち、無事日本に連れて帰ってまいりました。従来通り、 SURR の空間にてお客様に御披露目するに相応しい最終段階の様々を経まして順次御提案させて頂きますので、御期待頂けましたら幸いです。

 

 

【 後述4 】
つきましては近々、先日の旅で出逢えた第一陣のお披露目が叶いそうです。今回は自然な出で立ち,居様とご認識される品々かもしれませんが、その実それぞれにモードの本国, フランスならではの要素と魅力とそれぞれ異なる骨太な求心力を備え、現代に生きる皆様のレッグラインを秀逸に彩りお愉しみ頂けると信じて止まない布陣になることと思います。追ってご報告させて頂きますので宜しくお願い申し上げます。

 

 

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