Argile / Diary542
29.5.2018

 

 

– Argile –

 

カリーム・アジャブ氏が今現在、最も心血を注いでいるクリエイションである「Argile」
先日御掲載頂いたThem magazine様の記事が、要を得た素晴らしい内容で御座いまして(というのも上からの文言に聞こえてしまい失礼かもしれないが)「Argile」の実相につきましても、とてもクリアに御掲載を頂いております。しつこいようで恐縮ですが、下記URLにてリンクをさせて頂きます。

 

【インタビュー】Karim Hadjab as《APRÉS》

 

カリーム氏と過ごした時間を咀嚼し、目の前にある1着に熟慮を寄せる、僭越ながらわたくしは、Argileというクリエイションに対する考え方や向き合い方、直感的なインスピレーション等等を超えた、コントロールの効かない “ 情 ” のような感情を抱きまして、なんとも感慨に打たれた次第であります。もし私が宝くじを当てたら、御興味くださる全てのお客様に KARIM HADJAB をプレゼントさせて頂きたいと思うほど皆様と共有したい感情、私も同様であります。(連番買いましたが、数字一文字すら当たらず)

 

 

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北アフリカは死海に沈殿している泥。“ 衣類を染める ” もしくは “ 身体に塗布し洗い流すことで綺麗にする ” という実際的に護られてきたその死海の泥と目的性は、習熟した行いのように浸透している現地民の伝統的習慣、ある種類においての民間伝承、謂わば、フォークロア。水分量を多く含むその泥というのは、限りなく黒に近いセピア色、“極”天然染料で御座います。ここでいう “ 衣類を染める ” とは “ 伝統的なる黒染め ” に値します。泥を衣服に塗布し、天然色としての黒を浸透させていくわけであります。カリーム氏のクリエイション「Argile」においては、この死海の泥を用いるわけでありまして、その過程において、あるいは事前段階において「草木染め」という行程を踏み、自然界より抽出した天然染料を栄養素のように衣服に注ぎ込み、黒染めが実行され、草木染料,泥の浸透具合や浸透箇所、天候や湿度の差異、様々な自然的要素/不規則的環境,状況により、完璧なる「個体色」を獲得するわけですが、視覚的には、ダークトーンのオリーブベースや、慣用色には名を持たない匿名的なカーキ色、濃密なミルクカラー、そして全体が広域かつニュートラルに濃縮された黒(確認できているのは1点)。それらには近しい3種の絵の具をドラマティックに混ぜたような濃密とも謂える深いコク、そして、あたたかな温度があります。近しいカラートーンが並んだとて全くを持った「同色」という完全性はなく,むしろ比較性を超え、完璧なる「個性」というものが保存された独立色。

 

 

 

 

 

 

 

何よりも美しいのが、それらに映える “ 色彩としての黒 ” で御座いまして、襟やラペル,袖口に静謐な表情で佇む黒、既成ルールなど無視、リバースして着用した際のあまりにも美しい対比色は、 “ 天然色としての黒 ” の強烈な存在感というものをノンフィクションで感取致します。その様というのは、造形が見事な額縁に収めてすらも成立するであろう美術的視点と、無垢な衣服としての機能が、完璧に近いほど共存していると、拙い言葉/言葉で恐縮ながら感慨に打たれたわけであります。
 

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“ 身体に塗布し洗い流すことで綺麗にする ”
 
氏は、その意味性や言葉を超えたカルチュアに対する絶対的な敬い、あるいは限りなく深い尊敬、賛美すら抱いております。 “この泥を用いて” “衣服を染色することで” “綺麗にする” 。視覚的美しさや、完璧なまでのアイデンティティを認めること以上に、文化への誠実な敬意と、アナロジーではない力強い実相、概念性を遥かに超えた “ 衣服を綺麗にする ” という美徳、それらは自然的回帰の顕れのように感じますし、ある種類においての「衣服の純化」にすら感じます。実際的な意味でも、概念的浄化であったとしましても『 時を経た洋服は、まさに人間のように生きている 』という氏の無垢な想いに添う行いであり、ひとりの男性の憶いであり、何より衣服に対する不可侵なほどの敬意と愛情を感取するからこそ、これから先はおそらく、この1着を連れ添うことになるだろうと、宿命的なナニカと同時にコントロールの効かない “ 情 ” のようなナニカを深い部分で受け取るのだろうと、拙い言葉/言葉で恐縮ながら、やはり感慨に打たれたわけであります。

 

 

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KARIM HADJAB “ Argile ”

 

1950年代の美しき個体をベースとした境地。品質表示,サイズ表記/サイズ展開はおろか、ネームプレートも御座いません。どのベクトルでどのように向き合おうと、どのアイテムで絞ろうと、どのような精選法を用いようとも、どのようにお選びになられましても、どのようなスタイルで着用されましても正解で御座います。

 

そして、オーナーとしてたっぷりと愛情を注げるような1着、そんな出逢いと成り得ましたら。僭越ながら、我々としましても至極幸福に尽きる想いであります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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