Diary や Online や店頭で 『 ファッションを目的とせずに、結果 “ ファッション ” に成った 』 という言葉を何度か使わせて頂いていますが、この文言は SURR にとって欠かせない要素を表します。それは生活のため,仕事のために洋服が作られていた時代のものから20年弱前までの MENS ファッションを一同に介しているからであり、それらが肩を並べている事が SURR にとっての日常なのです。
そしてモードという、いわゆる “ ファッションシーン ” で絶えず繰り返されているのがファッションではない要素、アンファッション・デザインの抽出です。 仕事をするための『 ワーク 』 や、国を守るための 『 ミリタリー 』 を筆頭に、機能性・利便性に基づいて設計されたディティール等をハイファッションとして新たにパッケージングし、人々に提案するのがデザイナーと呼ばれる人々にとっての重要な役割の一つではないかと思います。
光栄なことに、メゾン・デザイナーの方々をご対応させて頂く機会があるのですが、その時に彼ら(彼女ら)が手に取り、時に物凄く興奮してもらえるのは確実にアンファッション・デザインが在る洋服たちです。これは私たちにとっての明確な事実。
そして彼ら(彼女ら)が手に取るアイテムたちは、もれなく私の心拍数も上げてくれるのも明確な事実。
北青山のマンションの一室で静かにのんびりとヴィンテージ “ 専門 ” を貫いてきた結果、年間数点のみですが 『 アンファッション・デザインの怪物 』 に出会える環境に成りました。例え何千何万の洋服に触れても、『 怪物 』との出会いで受ける衝撃と喜びは変わりません。
前置きを書いていたら予想以上に長くなってしまいました。大切に思っていることなのでご容赦くださいね。
それでは本題。今シーズンの新作からアンファッション・デザインの怪物をご紹介させて頂きます。
この写真を見てとあるメゾンを連想された方は、首後ろに4箇所ステッチが覗く洋服を着られているかもしれません。
生地のほぼ全体を覆う不規則な紋様は、何を隠そう “ カビ ” でございます。
温度や湿度,そして時間との兼ね合いで発生するカビ。表面を覆うその独特な紋様は一般生活においてポジティブな意味合いを含みませんが、あるところにそれをコンセプトデザインに結び付けた、破壊的なまでに奇異なデザイナーが居ました。
彼は、洋服という “ 静なるもの ” が微生物という “ 動なるもの ” によって変化させられ完成する様を、(ある種)刹那的なファッションのサイクルに向けてのメッセージとして活用しました。マイナスとされる要素をプラスに変換し、さらにファッションに落とし込むという行為は正直かなりの衝撃ですが、それと同時に彼によって計算し尽されたカビの 『 デザイン 』 は、一つのファッションとして見事に成立していたのです。
もはや伝説と言って差し支えないデザイナーの、アイデンティティを表すエピソード。
それと同じ事をされているのが本品です。
彼のように計算して行われたのか、自然に生じたものを私が勝手に解釈しているのか。
恐らくは後者だと思いますが、紋様が不思議なまでにテキスタイル・デザインである事と、ファッションとして成立した一着である事は事実。そして、彼がこういった品から影響を受けていた可能性は否定できません。
50s French work , moldy jacket
時間と自然が生み出したアンファッション・デザイン。
こういった物は無限の価値と可能性を内包します。
言うまでもありませんがもちろん滅菌済みですので、リアルクローズとしてのご提案。
特に嫁ぎ先が楽しみな一着です。
明日もアンファッション・デザインをご案内させて頂こうかと。
SURR by LAILA 福留
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