Freedom / Diary413
20.6.2017

 
1970年代までフランスの地で働く、教師や教授、サイエンティスト、絵描き、建築士、彫刻師、音楽家、林業士、農業士、材木士、料理人、靴職人、etc。改めて申し上げる事もなく自明の事ですが、当時彼らが着用していた衣類を現在では「French Work Wear」と呼び、ヴィンテージのステージではひとつの選択肢として存在しております。米国や他国でも勿論、当時様々なカントリーでワークウェアが存在していたにも関わらず、現在では何故、“フレンチワーク”という要素が確立、広い範囲で認識に及んでいるのか。その事由のひとつに、フレンチワークピースには「屈強」と「上品」というワードないしステータスが内在していると挙げることが適いましょう。特徴的なアームパターンが多いフレンチワークウェア(主にジャケット,コート)では、腕の可動域が広く、ジャストフィットでも窮屈にならない、その上、サイズアップしても成立するフィッティング概念、さらにその殆どが頑丈なコットン地、若しくはモールスキン地。チューニングを施せば永く着用し続けることが叶うファブリック。それでいてミニマムな要素を含んでいる(例えば襟型,例えばラペル)、美を追求するフランス性、その熱が表面化している一例が、当時のワークウェアではなかろうかと。ワークウェアにおいて当然に要求されるタフネスさに加え、品が確保されているエトセトラがフレンチワークの衣類には多いのではと、認識に及びます。
 
 
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Karim Hadjab cotton tailored jacket
 
CREATION – Argile –
LOCATION – West Africa –
BODY – 60s French work ,waiters tailored –
 
 
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1960年代、フランスの地、例えばレストランで働くウェイターという仕事。当時彼らが着用していた衣類はダブルブレストというディテールと、テーラードである要素、そしてコットン素材という特性を持ち合わせているものが多く、腕の可動域やアクション性は文頭の通り、釦の配置も極めて収まりが良く、モダンさすら伺える佇まい。ともあれ、この1着に、直径約12,742 kmの広大な球体上で唯一無二かつ完全たる “ 個性 ” を与えるために選択したクリエイション「Argile」。西アフリカに位置するマリ共和国、其処で、死海の底に沈下している “ 泥 ” によって染め上げる。染まり方も疎らかつ極めて不規則な染色が特徴。染めという過程に要する時間,染め方,置き方,分量,対象衣類のコンディション,様々なエレメントによって唯一無二の着地点を確認できますが、それは所謂インディゴ染めや、藍染めと同等。しかしながら “ 死海の泥でなければならない ” 理由が、自然色と分類できる極めて特質的なカラーバランスこそ。
さらにこの1着の衣類には、死海の泥を塗り、後、西アフリカに存在しているニジェール河に沈め、後、西アフリカの極熱の陽光を受け入れる。以上の行程を連続して6日間リペスト。「Argile」というクリエイションの中でも特異的な行程を経た1着は、“ Deep Olive ” に近しいカラーを獲得。其れこそ、ニジェール河を連想できるライトブルーのコットンシャツをチューニングするのは贅沢。ブラックとオリーブの対色比も素晴らしい逸品で御座います。
 
 
 
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Karim Hadjab cotton tailored jacket
 
CREATION – Argile & Bacter –
LOCATION – West Africa & Kaim’s atelier –
BODY – 60s French work ,waiters tailored –
 
 
本品は、死海の泥で染め上げた後、バクテリアを培養した液に投入する「Bacter」というクリエイションを経て、唯一無地の表情を獲得した1着。各クリエイションを段階を踏んで行う複合的プロセスは、あくまで “ 完璧なる個性 ” を得るためのベクトルにすぎず、実験を積み重ね、あらゆるデータを採取し、その上で辿り着くステージで御座います。バクテリア=微生物は、当然なまでに自然界、それこそ死海の泥にも存在しますが、敢えて、作為的に培養した液体に投入することにより、微生物の繁殖と天然素材を食す特性、そのスピード、範囲は、人為的にコントロールできる領域ではないため、最高レベルの自然的特異性を獲得することが可能。表面上に疎らに出現した表情は、ひとつのテキスタイルとなり、通常「Argile」のみでは表現しきれない唯一無地の「個」を確保。
 
迫力性や圧倒力というワードでは表現しきれないムードをご体感頂けますが、いつぞやのレザーパッチと同様に、柔らかい表情をお持ちの方にこそ、是非ともお勧めさせて頂きたい1着のテーラードジャケットで御座います。
 
 
 
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Karim Hadjab cotton T-shirt
 
CREATION – 4Saison & Argile –
LOCATION – France –
BODY – 90s Tee shirt –
 
 
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全米鉄鋼労働組合を意味するUnited Steelworkers。北米製カンパニーメイドの1着は、90年代らしい宛らの魅力を発しておりますが、テキストのマリーゴールドがあまりに美しい事から選抜されたボディベース。当時、数多くも生産されていたであろうこの1着、対して、完全に自立させるべく選択した2つのクリエイション「4Saison」と「Argile」。フランスの地で自然界に身を置かせ、人間界から完全隔離。後、死海の泥で染め上げるというクレイジーなプロセスを経て獲得された個性は、表面のミルキーなカーキ色と裏面の楠んだブラックとの対比があまりにも美しく、キャンバスに無造作に描いたような美術的表情を確認。恐縮ながら医学的見地からモノを申し上げる程の知識を持ち合わせておりませんが、カーキ色と隣り合うせいか、視覚的作用のせいか、ブラックがディープネイビにも確認できる特異性。4Saisonのプロセスを含んだことにより、特徴的な陰影と相俟って、究極の個体へと昇華された逸品。
 
恐れることなく、是非とも一級品のスーツに。
 
 
 
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Karim Hadjab light weight knit pieces
 
CREATION – Argile & Bacter –
LOCATION – West Africa & Kaim’s atelier –
BODY – 60〜70s french –
 
 
Karim氏が各種クリエイションする上で、最も難易度が高く、かつ、成功例が殆どない、と豪語するは、コットン又はリネンという素材からライトウェイトに織られたニットピースに、「Bacter」を施すこと。柔らかなファブリックと、“ 編まれた ” という性質に対してバクテリアの浸食はあまりに刺激が強く、その過程において殆どが未完。実験とデーター採取を繰り返し、「Bacter」を施す時間ないしセーヴィングを試みますが、そもそもがヴィンテージニットという衣類なので、当然に共通するセーヴィングは存在しなく、頭を悩ませたBODYとBacter。成功例が極めて低いながらも成功に到達した唯一2着は、ありえない程のフィッティング概念を獲得。意図しては絶対的に叶わない伸縮は、各部分において極めて特徴的に現れております。後、死海の泥で染め上げられ、極上の個体として世に生まれた衣類。左右それぞれ長さの異なる袖、そもそもが長いのですが、リブは編みの性質からか収縮しており絶妙なアンバランスさを確保。当然丈の長さも異なり、袖を通すと肌に触れる箇所、触れない箇所。着用し、脱ぎ、洗い、着用をエンドレスに続ける事で叶う、オンリーフィッティング。ニットや織り、そういう表現や次元ではなく、まさに「衣類」「衣」と表現するのが腑に落ちます。それも季節や,時期,暑いから,寒いから、そのようなベクトルでの着用ではなく、日々着るもの、毎日の肌着、ヒトに寄り添う素材。おそらく、いえ、確実に、“洋服の概念が覆る” そんな逸品で御座います。この2着に限っては特にお勧めさせて頂きたいもので、よく謂われるアナウンスと理解していながらも、“先ずは着て頂かないと” で、御座います。
 
1着1着が個性的であり、自由であるKarim Hadjabの衣類は、それこそ自由気侭なスタイリングというのを推奨させて頂いております。誠に勝手ですが、Karim Hadjabの衣類こそ、そうであるべきだと。
 
例えば、このニットピース。サイズやデザイン、シルバーかゴールドか、合うか合わないか、そのような考えを一切合切排除し、好きなジュエリーを好きなだけチューニング。マルタンマルジェラ氏の偉業を確認できる1999awコレクション時、現在でも最高傑作と詠われているウールトラウザー。足下には正統的かつインテリジェンスなフランス靴の銘手、ナンバー180。
さぁ、どうぞフリーダムに。
 
 
 
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各1着、ご縁が御座いましたら。
ご賢察の程、どうぞ宜しくお願い致します。

 

 

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