3W / Diary869
25.5.2020

気付いたらポンと、本当にポンという音と共に突如出現したかのようにさりげなく部屋の片隅に落ちていた紙を広げてみると、あまりにも懐かし過ぎるためなぜ今ここにと腰を抜かしそうになりましたが、よくよく考えてみたら数日前押し入れの奥にあった CD を久方ぶりに整理しておりまして、その時にどこかに挟まっていたのが落ちたのでしょうが、 CD という物質の行く末を想い、ジャケットのアートワークであったりブックレットであったりはやっぱり面白いじゃあないかと再確認し、音楽配信サーヴィスの予測推奨機能について考えておりましたので、気が付きませんでした。

 

 

 

十代の終わり頃。働いていたコーヒーショップの先輩 H 氏には業務関連の事柄と並行して様々な意味合いにおける嗜好品の類を文字通り教えて頂いたのですが ( そういえばそこに服飾に関しては含まれていませんでした ) 、そのうちの一つがとあるジャズピアニストでして、当時は今以上に音楽を雑に雑食に嗜んでいたもののジャズには明るくなく、氏との雑談でいつかは色々と聴いてみたいなどと口にした数日後に “ はい、ドメちゃん ( こう呼ばれていました ) これあげるよ ” と一人のジャズピアニストの音源を自身で選曲した CD をくださいまして、その中に推薦文と言いますか推奨文と言いますか、上記の紙が入っていたのです。
いつぶりかも覚えていないぶりの紙を眺めるでもなく眺めていると、今の私の生業との共通点である、いや、私の生業の根幹である “ 御興味頂ける誰かへの御推奨 ” がこの一枚に込められていることに気付くまでもなく気付きました。

俺いまだにめっちゃ聴いてるよキース。すげぇなハッシーさん。

 

 

 

私は H 氏から推薦されたこのジャズピアニストをいまだにとても聴いているだけでなく新譜が出たら買いますし、あまつさえ “ 好きな音楽は? ” と問われたらきっと五人以内に挙げるほどに愛好しているのです。これにはもちろんのことピアニストの才覚そのものが在りますし、それこそ著名な御方ですから、この一件が無くとも出逢っていたのかもしれませんし、それこそ昨今の音楽配信の予測推奨なども考えるときっと出逢っていることでしょうが、果たして今の心のように掛け替えのない存在に成っていたか。不毛な想像の一つですが私は否であると想わずにはいられません。

 

 

 

もしかしたら嫌いな音楽に成っていたかもしれない。そう考えると心の臓が震えますが、存外想像では済まないのではないでしょうか。私は十代の終わりに職場にて信頼する H 氏からの推薦で出逢いましたが、これが別の時に別の場所で別の人を経て出逢っていたら、嫌いに成る可能性なんぞこの世には幾らでも在ります。その危険性と恐怖心を伴うと同時に素晴らしい何がしにも成れる蠱惑的な “ 御推奨という行為 ” には、 5W1H ( ゴダブリューワンエイチ ) ではなく When いつ / Where どこで / Who 誰から による 3W ( スリーダブリュー ) が大きく関わることを一人肝に銘じてきましたが、この一枚の紙という視える形によって改めて認識することができました。

男性に向けてのヴィンテージ専門店であり、ヴィンテージを用いた装いに関して御提案・御推奨させて頂いております弊店。引き続き、いや今まで以上にこの行為と生業を丁寧に向き合わせて頂きたい所存です。

 

 

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