近年ヨーロッパのファッションシーンが、主に3名の日本人デザイナーに対して加速度的に注目を集めていることを身をもって体験すると、純粋に嬉しい心持ちになります。デビューが海外であったり、早い段階で Paris で認められていたことから、ヨーロッパにおいての解釈は極めて芳醇かつ尊敬に満ち溢れており、時には日本以上にフェアでフラットで、ある種正しく受け止めているように感じるほどです。
私は欧米至上主義ではございませんので、西洋にはそれぞれの文化があり、それに伴う “ 出来ること ” があり、それに伴う魅力があると同時に東洋にも同じことが言えると考えておりまして、こと洋服に関しましてもそれは顕著です。
だからこそ主に3名の日本人デザイナー、彼らや彼女の初期作品に対してトップメゾンのデザイナーたちが熱視線を送ってくれることは喜ばしくてなりません。日本の文化とそれに伴う世界観が認められ、愛され、敬れることは同じ国で育った者として誇らしく思います。
この度のエントリーではそのうちの1人が80年代に生み出した、出逢えたことを幸せに想える一着をご紹介させてください。
より合わせた布を縫い止めし幾重にも重ねたマテリアルは、生地開発から行う三宅氏ならではの独創性に満ち溢れており、一見すると道着に近しいテクスチャーながら、従来均一であるはずの生地から発される立体感と表情と、何より特有のフォルムの着地点にはただただ圧倒されてしまいます。
たっぷりと、本当にたっぷりと生地を用いて描かれるパターンは日本古来の和装に則った “ 直線の美学 ” 。直線をあえて身体の曲線に沿わせる手法はヨーロッパのモードシーンでも度々行われますが、その文化を根幹に秘めているからこそ一味も二味も異なる氏の感性を存分に反映した出で立ちは美しさの新しい形として認識できるほどです。この、極地的に追及された素材と文化に沿ったパターンが織り成す “ 歪み ”ではなく “ 収まり ” こそ、三宅氏のデザイン哲学そのものではないでしょうか。
一着のファッションピースとして見ればデザインベースはダッフルコート、そしてスタイルはオーバーサイズですが、決して注視して紐解かずとも、袖を通した瞬間、感覚的に心を震わせてくれる圧倒的な美学があり、ありふれた言葉では表現しきれない感情を抱かせてくれる一着ではないかと思います。数ある三宅 一生氏の初期作品の中でもミュージアムピースとしての存在価値を認められる一着ですが、 SURR は引き続き、あくまで日々に関わるリアルクローズとして御認識頂きたく思います、これが実生活と密接に結び付き、革新的な快適性をお楽しみ頂けましたら、何より何より嬉しく思います。
80s Issey Miyake , oversized parka
SURR by LAILA 福留
03-5468-5966
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