修繕が施されたプロダクト / Diary1338
26.9.2025

ヨーロピアンカルチャー,フランスなんて特に特に特に昔から圧倒的な服飾史的存在価値と市民権を有している“修繕が施されたプロダクト”。それらは自ずとファッションデザイナーの品ではなく労働のためや生活のための品々で修繕にはそれらを予想・妄想・想像させる気配が漂い、イコール歴史そのものだからこそ前述の存在価値として尊敬され続けてきました。それらを集めた博物館展示も珍しくなくナポレオン・ボナパルトの豪華絢爛な実物衣装の並びに修繕がびっしりと施された市民の衣類が飾られていたりと非常に興味深い構成だったりします。

 

 

ゆえにかねてより存在する修繕が施されたプロダクト専門のコレクターたち。彼らや彼女らにとって仕事相手は往々にしてファッションデザインの御手本を探すデザイナーや会社であったり貯蔵品を探す博物館関係者であったり熱心な個人収集家であったりと、ファッションコレクターの中でも敷居が高い存在だったりしまして、自ずと埃っぽいことも現代的なシルエットではないことも極端な話ですがもはや服としての体裁を保っていなくても問題無し、“なぜなら生地そのものが修繕そのものが歴史だから”言わんばかりの威風堂々たる佇まい方やコレクターの表情もまた非常に興味深く、なによりも独特。

 

 

実はこれまで弊店では彼らや彼女らとのコミュニケーションはほとんど交わされなかったんです、弊店にとってしっかりと現代のファッションとして向き合えるプロダクトであることは必須条件なので埃っぽいものもシルエットが好みでないものも服として成立していないものを選ぶことができませんから。見る分には触れる分には特段に楽しく刺激的なんですけどね。とあるコレクターが修繕された生地の一部分や古い生地の一部分を大量に集めた分厚いファイルを所有していたのですが物凄く素敵で猛烈に欲しかったです、価格を聞いて無言で戻しましたけど。きっとあれはどこかのメゾンやデザイナーが獲得したんだろうなぁ、まさに服飾史そのものでした。

 

 

ということで素敵な素敵な修繕が施されたプロダクト。弊店が旧LAILA VINTAGE体制からSURRになるにあたって、それらに敬意を払うべくアートリペアという勝手ながらな冠にて稀に御提案してきましたが、もうここ数年その文言を使っていませんでした。まぁ元々御提案したいと思えるそれらなんて滅多にありませんでしたが、だって奇跡のバランスみたいなもんですもん。本当に久しぶりな御提案となります、アートリペア・プロダクト。

 

 

特徴であり象徴である背面の大型ポケットそのものすら撤去されている50年代のハンティングジャケット。その全体に施された修繕は筆舌に尽くし難いです。一体何人の手仕事が関わっているのだろうか、一体どれくらいの時代を跨いでこの姿に辿り着いたのだろうか。予想・妄想・想像はとどまることを知りませんが決してその域を超えません。当然ながらしっかりと着るための服として成立していますしこれからも成立し続けるでしょう、生地の表面におそらくは防水を目的としたコーティングが施されていたようで現状“コーティングが施されていたんだろうな”と思わせる程度でほとんど消えているのですが、ここまで修繕されながらも生地強度が残ってくれているのはその消え失せたコーティングが大きな要因だったと思われます。

 

 

なお両胸のポケットボタンが欠損していたので私物コレクションの90s Hermesゴールドボタンを縫い付けました。敬愛なる服飾史、親愛なるアートリペアということで。

 

 

 

 

 

New 50s French art-repair cotton hunting jacket

 

 

SURR 福留

Copyright © SURR All Rights Reserved