
新作として御披露目するのがだいぶと久しぶりと言うのと、その圧倒的な存在価値から新たな出逢いはないと思っていたこともあって、私は彼のこと,彼というファッションデザイナーが産み出した存在を目の前にすると何と言ったら良いものだろうか何と捉えたら良いものだろうかと呆然に漠然に思案と夢想をせずにはいられません。オーストリアのリンツに産まれblah-blah-blah、仕立てを専門的に学びblah-blah-blah、そのあたりはもうよろしいでしょうかね。とにかく強烈に独立した思想と思考で自身が設立したCCPでは生と死,始まりと終わり,恍惚と悲しみ,自由と監禁といった大胆な対比によるメッセージクリエイションや、時に動物の剥製をそのままの形状で鞄にしたり革の裏地に動物の血を塗りつけたりネズミの皮を剥いで帽子をつくったりと数少ない過去のアンケートでキャロル本人が“常に人々を驚かせたい、それがデザイナーというものだ”と答えている通り人々を驚かせ惹きつけ続けてきました。キャロルがCCPを去ってから10数年経った今なおその存在価値は色褪せるどころか、トレンドやインフルエンサーやSNSに左右される機会が増えた昨今は一層輝きを増しているのは間違いないでしょう。
服飾史を彩り積み重ねて今にバトンを渡してくれたファッションデザイナーやアーティストは数えきれないほどいて全員がかけがえの無い存在ですが、やはりその中でも結果的にせよ必然的にせよ抜きん出た人物が幾人かいると思いますし、その中でも伝説としてこれからも語り継がれる人物が僅かながらいると思いますが、僭越ながら弊店にとってキャロル・クリスチャン・ポエルというファッションデザイナーは伝説枠です。





ドレスメイキングの学校で仕立てを学んだにも関わらず,いやだからこそでしょうか、CCPの作品を身につけるという行為にあえて苦痛を織り交ぜ徐々に快適になっていくことを調和ではなく“戦い”と捉え、多くの場合快適であったり実用的である衣服という存在価値から意図的に逸脱させることでCCPの作品は着用者に役立つ物体ではなく自立した存在であることを主張したキャロルにおいて、ミニマムでハードでフェティッシュなレザージャケットは代表的なプロダクトとなったことは必然であり、知る人にとってはきっと知っているにも関わらずいつ見ても圧倒的な佇まいであり知らない人にとってもきっとモノ言わぬ衣服であるにも関わらず何かを感じずにはいられない存在感を有するのもまた必然。時代がうんぬん関係ありませんが前述の通りのような昨今だからこそ異質さは際立つのではないでしょうか。
もう一度言いますが、もうヴィンテージCCPを御提案できる機会は無いに近しいと思っていたので、まさかここまで立派な作品を改めて御提案できるとは。しかしながらこれまた前述の通り私は彼の作品を目の前にすると思案せずにはいられないのできっと御客様との交流に際しては単純に格好良いの一点張りになるかもしれません。今思いましたが思案してしまうのはキャロル・クリスチャン・ポエルによるCCPほどメタファーでもシニカルでもなくアーカイヴとして,ARCHIVEという真に正しい言葉の意味で扱われ保管され継承され続けたファッションプロダクトなかなかどうして存在しないと私が思っているというのも大きいと思いました。


New 2000AW Carol Christian Poell hiding pocket leather jacket
要は畏怖ですね。
SURR 福留
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