限りなく無限に近い個性 / Diary143
29.5.2015

お客様とデニムと私。
このトライアングルが結ばれた状況で様々お話させて頂く機会がありますが、何をどれだけ言おうと結局のところは大切なのは “ デニムとお客様の相性 ” と “ 自分をどう演出したいか ” 。この二つなのではないかと思います。

これから御紹介します2本は、共に 『 リーバイス 』 というメーカーの 『 501 』 という品番の 『 デニムパンツ 』 というアイテムですが、ここに至るまでの環境因子の差異によって、全く異なる姿を獲得しています。

 

 

 

 

 

SDIM2943
SDIM2943

70年代中期~後期頃に生まれた本品。
501 という品番はテーパードというスタイルを貫きながらも、そのフォルムは極めて微細に変化しており、この時代は特に洗練された現代的なテーパードラインが魅力の一つです。

着用を重ねる事で生まれる爽やかなサックスブルーに潜む、ヘヴィーデューティーの香り。明白なエイジングにそこはかとなく染み込んだ野性的な色調から、本格的なワーカーもしくは野外での着用がメインだったのではないかと想像させる、アンニュイさ。

 

SDIM2943

膝のクラッシュも洒落っ気ではなく、リアルな環境下で生じたものではないでしょうか。

 

何より興味をそそられるのは、裾部分の “ 内側に折り返した形跡 ” です。カットせずに折り返していたという事はシューズに応じて変えていたのでしょうか。さらに、いわゆるロールアップではなくあえて内側折りを選んでいたという事はスーツトラウザーズを意識していたのでしょうか。
全ては推測の域を出ませんが、過去着用者が丈感に対して美意識を持っていた事は間違いなく、その配慮に純粋な美しさを感じずにはいられません。

SDIM2943

 

 

 

 

 

SDIM2943
SDIM2943

続いて御紹介しますは40~50年代の一本。
品質を表す 『 XX 』 の愛称で知られる生地は言語化できない質実剛健・威風堂々な奥深さが最大の魅力。上と同じく労働環境で現実的に穿きこまれたと推測される仕上がりですが、特徴的なのは過去着用者のサイズ感性です。

 

SDIM2943

着用を重ねる際、サイズがフィットしていればいるほど濃淡が明確に現れるのですが、こちらは不思議なほどにフラットなエイジング。インチを上げてゆったりと着用したのは所有者の純粋な好みでしょうが、その非作為的かつ非装飾的な行いが、結果的に新鮮かつモダンな XX に仕上げる要因となったのが興味深い。

 

SDIM2943
SDIM2943

 

そのモダニズムに年代特有のステッチカラーがプラス。モダンとクラシカルの未計算なアンサンブルをお楽しみ頂けます。

SDIM2943

 

 

 

 

 

過去所有者の趣味嗜好はもちろん、時代,環境,空気,水など様々な因子が重なり合い混ざり合うヴィンテージデニムは、同じ物が二つとありません。その “ 限りなく無限に近い個性 ” こそヴィンテージデニムの本質的なポテンシャルであり、それぞれに特性と魅力があるからこそ、自分に合う一品に出逢えた時の喜びはひとしおです。

 

残る判断基準は自己演出。是非意思に沿って頂ければと思います。

 

 

SDIM2943

SDIM2943

 

 

 

ちなみにここ最近の私は、ダサいを通り越して “ もはや残念 ” な自己演出を心の底から楽しんでおります。お気に入りのデニムに足を通した時の残念さに満足感を覚える自分は、正直なところ何か欠落している感も否めませんが、突き詰めれば何かの答えに辿り着けるはずだし、完璧な人間はきっといないし、そもそも自己満足だからイイのイイのと酒を煽る日々。

 

 

SURR by LAILA 福留

03-5468-5966
[email protected]

 

 

//

Copyright © SURR All Rights Reserved