Jean paul Gaultier and more / Diary472
1.12.2017

 
 
長たる歴史や遍歴,軌跡を永遠とご紹介するつもりは御座いませんが、プレタポルテという概念が拡散したその根源に値するParisにおいて、幅も広くその才気を発揮してきたジャンポールゴルチエというひとりの男の功績は、キーボートにたった16文字の英字を打ち込むだけで彼の人生が出現する今の世の中。
少なからず、規則的に書き並べられた在籍環境や携わってきた人、それをひとつ境遇と呼ぶのなら “ どうでもいい ” わけなど決してなく、ましてや84年からオートクチュールコレクションが開始されるまでのメンズコレクション、その後のエルメス就任、どの年数を,どのシーズンを,どの作品を断片的に視ましても、常に、彼の才能がオーバーラップしている様が明確にも浮かび上がる具合。あらゆる尺度を用意して立ち迎うその瞬間、ファッションという世界に僭越ながら携わらせて頂いている身において、これほど幸せなことはないと想う次第です。本当によかった。
 
 
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どの年数を,どのシーズンを,どの作品を断片的に視ましても、兎にも角にも、濃い。頭がおかしいです、本当に。情報がなにもない真空の状態で眺めるのが本来は何よりと思いますが、たとえば時系列を排除したうえで作品と向き合い、純粋性のみで勝負(賢察)しましても、怖ろしいほどにディープで、アナトミカル。無国籍で無人種。それは彼が専門的にファッションを学んでいないからなのか、常軌を逸していると初見の意が浮かびましても、シンボリズムやモニュメント性が少しも感じられないのは、少なからず、“ 人が着る ” ということが出発点であり終着点であること。端的に申し上げても、本当によくできた洋服です。さらに謂えば、あらゆる資料を捲っても元の着想点がまるで思い浮かばない。そもそもとして、今日着るか、明日も着るか、そうだ来週も着ようと素直なベクトルこそ全てなので、そこを追求する意味はまるでないのですが。わたくしもまた病気でしょう。悪い意味でも。
 
 
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失礼を百も承知で申し上げましても、よくエルメスをやれたな、と。 “ 一寸の狂いもない変則性 ” に沿った素晴らしいデザイン群と、対極に位置するキングオブメゾンの揺るぎのないブランディング。かたや、彼が就任する2004年までレディースのクリエイションを一任されていた人物の師であった事実から、何かと筋が通る遍歴は、よくエルメスをやれたな、という一意見など素人の戯言と一蹴される素晴らしいクリエイションが、2004年から2011年の約7年もの間、披露され続けたこともまた事実。
 
特殊な好奇心を抱いた人々がひっそりと愉しむ種類のものでは決してなく、彼の長たる歴史や遍歴,軌跡と積み重ねた功績、偶発的に叶えられた境遇と、意図して叶えられた境遇。そんな彼を崇めた偉大なデザイナーと、それらすべてを含んだ上で、精査頂きたい内容であるのと同時に、キーボートにたった16文字の英字を打ち込むだけで彼の人生が出現する今の世の中、“ 一寸の狂いもない変則性 ” に沿った渾身の1着を目の前にしてしまえば、あらゆる文字列やロジックなど机上の空論。たとえ1000pに渡る文献があったとて敵うものではないと、お含み置きの程を頂けましたら、何より。
 
 
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彼が祖母から洋裁を学んでから、P.Cardin氏の目に留まり、自身の冠のもとで精査を続け、エルメスのフィルターで自己表現を続けながら威風堂々と君臨し続けた才質と痕跡、彼のクリエイションが最も如実に表現された手仕事を知る、ということは、ファッションを愛してやまない我々にとっては確実にアドバンテージ(誰に/何に対してかは置いておいて)。特に、1994年に発表されたこの1着は、クレイジーに編み上げられた設計美、羊毛の上質さ、いたずらのように縫い付けられた無数の釦、両袖裏側に潜む特注の闘牛。 “ enfant terrible(恐るべき子供)” と評価された内容を濃厚に感じ取ることができましょう。ゲーテの「世界の万物はメタファー理論」に、唯一該当しない独立性と、他に表現の仕様がないこのニットジャンパーは、隈なく検証すればする程に取り込まれて往く危険信号。
 
今後しばらくは、出逢ってしまった強烈な印象と、完璧に包囲された感覚は消えることがなさそうです。
 
 
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1994s Jean Paul Gaultier oversized knit pullover jumper with buttons
 
 
 
 
 
ゴルチエ氏を師として崇め、敬い、尊敬し、時にエルメスの冠を引き継いだとあるデザイナーのメンズファーストシーズン。紙一重に揺れるシンボリズムとアノニマスな匂い。
 
共に12/2より。
 
 
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