カシミアという繊維のニット / Diary456
17.10.2017

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約12cmほどの長毛の下に密生した白や灰色の柔毛(産毛)。凍てつく風が吹き荒れる極寒の地で、生態系を存続させるべく進化の末に獲得されたカシミアヤギの特性。
 
柔毛は細く、密度が濃く、がしかし軽く。なにより暖かく。
 
丁寧なケアリングにより豊潤な艶が出現する、その「繊維の宝石」は、毛の生え変わる限定的なシーズンのみ採取が可能で、1頭から収穫できる量はおよそ200g程度。収穫された柔毛は、繊維の細さや長さ、他毛の混入率などによりランク分けされ、厳しくもここで振るいに掛けられる。
 
「14ミクロン前後の細さ、35mm前後の長さ、0,1%以下の混入率」
 
これは、全5ランクある内、最上級と謂われる1級クラスの数値。
 
 
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例えばバランタイン社は、1級またはその上、特級クラスの柔毛しか使用しないことはご周知の通りですが、それほど上級にランク付けされる柔毛は、数値のとおり “ 細くて、短い ” が基本ですのでまぁ扱いづらいものでしょう。
 
詰まるところ、製品に仕上げるためには、呼応する確実な技術が必要なわけです。
 
 
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どうりで、バランタイン社の扱うニットは素晴らしいわけだ。それは横入りする隙間のないほど事実そのものであり、偽りもなく歴史が証明してきた内容でしょう。歴史など知らずとも目の前にある1着に触れればわかります。はっきり謂いまして、その光沢と柔らかさは本当に別次元。
 
 
一方で、イギリスの地で出逢いが叶ったとあるカーディガンは、摘みのよいボタンに穏やかなキャメル色。“ 細く、短い ” それらは、毛玉になりづらいという性質も持ち合わせているうえ、ブラシを滑らせるほど柔らかく、そして豊潤な艶、とろみが出現する特性。上級または1級クラスを扱うメーカーであることは容易に推測が叶うこれは、驚くべき事にアノニマスな内容でございました。
メーカーなど存在しない領域。存在してもしなくとも、どちらでも宜しいことですが、例えば10名のニットマニアが居たとして、内、9名は素晴らしい毛質だとお答え頂けると思います。これらの善し悪しの判別も、以前お話したソファーの一例に通ずるところで、質の良いソファーは質の良いソファーを知っているものしか分からない。
質の良いソファーに、質の良いコーヒー、美味しいフレンチトースト、カッティングで決まるサンドウィッチ。
加え、質の良いカシミアをインプット頂くのも、永い人生にとって決して無駄ではないはず。
 
ちなみに、10名中、1名は「わたしはカーディガンを着ないので」
 
 
 
 
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60s British cashmere knit cardigan
 
 
カーディガンを着ない、というルールを敷かれている方に強引に推奨は致しません。御素材どうこう、繊維がこう、という以前の内容でしょう。それはその特別ルールを遵守されるのが宜しいと、わたくしもやはりそう思います。
 
とはいえ、バランタイン社が提案するカシミアの其れと、極めて近しいクオリティランクを有する本作は、通常の収穫段階から柔毛の内容まで綴りたくなる純粋にも素晴らしい内容でございました。ブラッシングを丁寧にかけ、たまに暖かな自然光に晒しながら、大切にお召し頂きたい一品でございます。
そうか、これが上級のカシミアか、と、肌にインプット頂きましたら人生経験として何より。「カーディガンを着ない」とルールを遵守されている、その1名であったとしましても。
 
 
 

 

 

SURR by LAILA 小林

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