旅の鞄 / Diary696
29.3.2019

“ 鞄を雑に扱いボロボロにする ” というジェーン・バーキンの逸話を知った時に 粋だね と想われた方もおられることと想いますし私も御多聞に漏れずですが、だからとて雑に扱いボロボロにすることが全てではありませんで、もちろん Sac Birkin を手にしていれば万事解決というわけでもなく、結局は TOWER RECORDS 社の持ち帰り袋でも TSUTAYA 社の貸し出し袋でも Sac Birkin でも、それを選ぶ人を現わす記号性には変わりなく、いわゆるで言うところの格好良いには千差万別の論点がございますので、持ち帰り袋でも Sac Birkin でも格好良い人は格好良いものである と想いますが、そもそもとして実用性と結局のところ必要性を有する存在であり結果論としてそれを選ぶ人を現わす記号性を有するがゆえに鞄というものは愉しくもあり難しく煩わしい存在であると私はずっとずっと考えており、きっと幾人かの御客様にはそのようなお話しをさせて頂いてきたと想いますが誤解を恐れずに申し上げますと、鞄とやらは本当に厄介です。

なぜならば根本的に持ちたくないからです。私は日常であろうと旅先であろうと隙あらば手ぶらで出掛けます。が、社会に属しているとどうしても荷物が必要になる日がほとんどですのでやはり鞄は必要であり欲しいと想う存在なのですが、そうなってくると毎度お馴染みの男性ゆえの選択肢少ない問題に直面致しまして、かつ素直な気持ちとして、その額面だけを視ると衣類やその他装飾品よりも立派にならざるを得ない品であるがゆえおいそれととは決着させることのできない, させ辛い問題であり存在であり品と捉えているがゆえ、弊店で御提案させて頂く際には実用的であり品として純粋に魅力的であるか否かという根本と並行して “ これで終わらせて頂くことが叶うか否か ” という論点を大切に考えております。もちろん、 TPO に応じての使い分けが理想形ではありますが現段階の私がその境地に達していないがために前述をとても大切にしておりまして, せざるを得ませんでして、そうなると冒頭のジェーン・バーキンと同じく雑に扱いボロボロになっても構わないと想える品であること, そうなっても大丈夫な構築であることも判断基準に含まれて参ります。

この度も御縁あって実用的であり純粋に魅力的であり、雑に扱ってボロボロになっても構わないと想える存在であり構築であり、心から “ これで終わらせて頂ける ” と想える一つの鞄に出逢うことが叶いましたので御提案させて頂きます。

 

 


馬具製品を起点に鞄に派生し衣類に進出したように、時代の変化, 変遷に則した提案と表現を行い続ける Hermes 社は、近年でもその姿勢に則って時に秀逸な時に “ 面白い ” 作品を輩出し続けていますが、同区分においてこのような形状のシングルストラップ仕様は少ない印象でして、正統的か異端的かで申しあげますと私にとって本品は後者であり、もちろん社名を仰々しく記す箇所はございませんので御活用頂いた際に “ Hermes を持っている ” ことを第二者に解りやすく伝えるような存在ではきっとないと想いますが、正統的であらずとも社名は記されておらずとも、その表皮に, 糸に, 金具に, 実用性に, 存在感にわざわざ “ これ ” を選んで頂く意味と意義は充分過ぎるほど含まれています ( それは実物を御覧頂きさえすれば確実に御体感頂ける力 ) し、なによりいわゆる背嚢形状を選択し皮革の中でも特異な耐水性を誇る水牛の革を選択し圧倒的な容量と耐久性を実現している点、そしてモデル名が単刀直入に “ 旅の鞄 ” を指し示している点に Hermes 社および手掛けた職人からの どうぞ心ゆくまで雑に実用的に扱ってください という信号を感じずにはいられず、全ての要素が 『 人の個 』 を夢想する私にとってたまらなく、鞄という物質における一つの答えとして申し分のない逸品でございます。

 

 

 

 

 

Newarrival
1990s Hermes “ Sac de voyage marine ”

御自身を示す記号であり社会に属するうえでの純然たる実用品であり、雑に扱っても差し支えなくボロボロになってなお特異な求心力を御愉しみ頂ける鞄という名の配偶者として本品を御提案させて頂きます。

 

 

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