無口でありながら雄弁 / Diary668
6.2.2019


Hermes Homme における彼女の創作指針として、時代を超えることのできる品であると共に選ぶ人, そして身に着ける人の元々持つ魅力に “ 寄り添い、かつさりげなく押し上げる ” という考えがございまして、不変性であったり時代に呼応した個性であったり圧倒的な品質で表現されるのですが、いずれも触れ合ってみると感覚的にも体感的にも味わうことのできる物静かでありながら明確な意思を感じさせてくれる指針の実体化でして、時に普通のニット帽子, 起毛のカシミアテーラード, 総羊革のシャツで現わされるそれらにおいて、一見不変的なようで裏を返せば大胆不適な姿かたち、かつ綿密で創造的な構築が付与されている一着が視るものに与えてくれる、頭が混乱するような摩訶不思議で革新的な矛盾という喜びたるや。

 

 

 

 

 

 

1990年代に生まれた本品は、編みの表面にその輪を露出させることによって表地が裏地のようでありながら、その実両面に同等の施しがなされた穏やかにこだわりぬかれた生地と、古き良き米国文化をそのまま踏襲した装飾を身体に寄り添わせた時にゆっくりとだが確実にモード本場の匂いが嗅覚器の感覚細胞を刺激してくれる粋な構築と、柔和な白の不変的な肌着類の姿かたちでありながら、たっぷりと織り込まれた綿による見た目からは想像しづらいもったりとした重量感によって、無口でありながら雄弁という論理的には矛盾している, しかし存在としては矛盾していない、それこそ不変的でありながら圧倒的な品質による一種の “ 普通 ” によって身に着ける人に寄り添い本当に本当にさりげなく底上げしてくれる一着に仕上がっているのです。私は本品を肌着類のスウェットに留まらずニットとも形容しがたい極めて不思議でそれこそ革新的に矛盾しているシャツの一つと捉えております。

 

 

 

 

 

Coming soon
90s Hermes pile shirts

生地、構築、重量感からなる波状表現を締めくくるのは大胆不敵で美しいヒッポカムポスの刺繍。ギリシャ神話におけるポセイドーンの相棒を、一見すると不変で “ 普通 ” でありつつも穏やかにこだわりぬかれた無口でありながら雄弁な姿かたちの背中に置くという、これまた単純明快に無垢に愉しい こうでなくては な一着です。

 

 

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