美しい四季があるこの島国において、季節を感取するタイミング/モノ/コトというのは皆様其々と存じます。弊店においては、それはおおかた植物で御座いまして、4面の窓から覗くバージニアクリーパーの移り変わりこそ、四季を感取するタイミングと、常日頃,通年を通して愉しませて頂いておりました。それは私どものみならず、道往く人々も同様に、時折写真に収めていく方も多く見受けられます。2階の窓からそんな姿を目撃しますと美しさの共有とまで大袈裟に申し上げませんが、少しばかり嬉しく思うのも正直なところ。春には花を,ときに果実を実らせ、小鳥やイタチの親子(おそらく)が様子を伺いに集まる。梅雨の雨と夏の日差しを浴びて緑力しく生い茂り、秋には焦げた褐色を帯びる。厳しい冬の寒さでは生命まで凍らせないように力強くツルが絡み合う。それらは「情景」として見事に成立する四季の凝縮で御座いました。
バージニアクリーパーが永くに渡り保存されてきた向かいの建造物を含む、一定域の区間が撮り壊され、新たな商業施設(聞くところによると)が建築されるようであります。7月初旬よりその工事作業が開始されるようでありまして、まもなく、着工されるとの事。わざわざここで綴らせて頂く内容では御座いませんが、4面窓からの景色というのが大きく変化することは、それらを心から愉しみ、あるいは心の栄養を頂いていた私からしますとワールドカップで開催国ロシアがスペインに勝利した歴史的トピックスよりも大きく、米朝国際進捗より気にかかる内容で御座いました。誠に勝手ながら。
正直申し上げまして、哀しいの一言に尽きます。それは隠す感情でもありませんし、カレー屋で愛すべきパートナーに突如別れを告げられるように隠せる種類の悲しみでもない、率直な感情で御座います。しかしながら、難しいことはなにも分かりませんが、街の移り変わり、発展、あるいは其々における「成長」という概念性においては、北青山3丁目にとって必要な成り行きやもしれませんし、より良く、成る、ことを切に祈ろうと、夕暮れ時、初夏の此の頃にまた眺めているわけであります。
上述の通り、わざわざここで綴らせて頂く内容では御座いませんが、弊店にとって此のバージニアクリーパーは視覚的魅力、それ以上に、なにかもっと深く、熱く、おおきな存在で御座いました。我々が、1点物という特性が強いヴィンテージピース、メゾンの大作、100年前のリアルクロース、名も無き傑作達を、想いを込めてシャッターを切るのと同じように、そして文章と写真各カットを保存していく作業と同じように、誠に僭越ながら本文を迎えております。そうはいってもアンチテーゼのように何かを申し上げたいのでは当然なく、わたくしと同じようにこの窓から覗く景色を気に入って下さるお客様へ勝手ながらご報告とさせて頂いております。何が建つのでしょうね、と期待を寄せながら。また弊店では椅子もご用意致しておりますので、緑ある内、ときに避暑地代わりに、ゆっくりと御過ごしを頂けましたら。引き続き、皆様のご来店を心よりお待ち申し上げております。
2018/7/2 17:40
SURR by LAILA 小林
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