1759年にビール醸造会社を設立したギネスビールの創始者,アーサー・ギネスさんは、同年に当時使われなくなっていた醸造所を9000年間借りる契約をしたそう。設立してすぐに90世紀続けることを考えていただなんて、移ろい儚いファッションの世界において、実際に足を運んで品物に触れて御客様と顔を突き合わせられる空間＝店舗を“続けること”に重きを置き続けてきた私は相当に考えさせられます。歴史を積み重ね続けてきた先人、本当に凄い人が沢山居るなぁ,,,

皆大好きギネスビール。あの芳醇な香りと味わいにはそんなフィロソフィーの一つが敷かれてきたのですね。であれば今から約60年前に実際に活用されていたユニフォームが抜群に格好良いのも当然と言えば当然なのでしょう。
ヨーロピアンワークカルチャーにおける定番である夏用のアウター素材,ナイロンを用いたこちらは、設計の根幹が仕立て職人技術であった最後のピリオドとあって(これ以降の時代はより機械工業的な設計に移行します)シルエットの美しさやスタイル性の豊かさに単純明快なテーラーの美しさが潜む贅沢な一着でして、それはやはり働くうえでの動きやすさを念頭に置いているからこその、結果論的美意識の反映がやはり最高の求心力。
フロント4ポケットの構築も良い意味で既存のテーラードジャケットと異なり素敵ですね。これがコットンなどだったらより屈強な印象になるのでしょうが、ナイロンのエアリー感が良い意味でマイルドに仕上げてくれています。

襟に美しく刺繍された母国アイルランドを象徴する紋章,アイリッシュハープと胸元のGUINNESS。いわゆるロゴとブランド名ですが慣れ親しみ過ぎて逆にロゴ性が低いのがまた堪りません。このような良い服を着て働き、世界中に“Guinness is good for you”を届けていたんですねぇ。ありがとう、ギネスの職人さんたち。次は我々がアーサーさんのフィロソフィーが詰まったこのジャケットを現代のファッションアイテム、サマーテーラードジャケットとして楽しませてもらいますね。