1960 年代、スウェーデン軍のスノーマウンテンコート。
文字通り雪山での活動部隊のために製作させた一着で、そもそもの規模的な要因もあってかなかなかどうして出逢えない一品ですが、それ以上に純粋な構築力の秀逸さから成る一着の服としての完成度が、その出逢いの希少性を一層に高めているように想えて仕方がありません。

雪山という過酷な環境ゆえ防風は死活問題だからこその産まれた三枚重ねの特殊前立て設計に同じくな要素性にて拡大され個性が与えられたフラップ形状、構築的なカフスストラップに背面の可動域など各所に真の追及心と誠意あってこそ構築できた機能デザイン要素が散りばめられておりまして、その調和から成るは圧倒的にデザインな装い。しかしながら本品と同等のその他名作ヴィンテージ・ミリタリーピースと同じく、様々な要素が必要とされたからこそ高まったデザイン性は、時に大胆であったり個性的であったりとしつつも、結果的には深い味わいと圧倒的な説得力を有しておりまして、だからこそこれまでモードの御手本で在り続けてきました。その服飾史的事実は、これらのリアルヴィンテージを眼の前にする度に、いつも強く認識致します。本当に本当に見事です。

それらの構築は時に“ 現代の装い ”としてスペックを持て余すことが在りますが、本品は雪山用と言えども様々な上に羽織る真にオーヴァーフィッティングな一着だったために単体では極めてライトな生地感でして、芳醇な機能デザイン要素を軽やかに御体感頂ける点も弊店にとっては重要です。いずれにせよ格好良かったとて惹かれたとて、現代の装いに成れなければ宝も持ち腐れですので。

そして、名作ヴィンテージ・ミリタリーピースである本品に弊店が惹かれた最大の理由は従来の色ではないという点です。従来は雪に溶け込む白ですが、本品は弊店の元に辿り着くどこかの段階で誰かがほんの少し赤みがかったスモーキーなブラウンに染め付けてくれました。このような変異はヴィンテージの世界においてネガティヴに捉えられることがありますが、時にこのように一層の価値を有する別の一着として生まれ変わる時があると弊店は考えています。