想像すると口角が上がる / Diary714
2.5.2019


豪奢さや秀麗さと共に混沌を調和させるー  そのそれぞれが並大抵ではない深度で調和しているからこそ氏の世界観は街中で定期的に眼にすることができるものではないにも関わらず、心が寄り添った際には強い求心力を有すると感じておりまして、混沌は例えばランウェイという御披露目の場において着用者の進む方向が無作為に交錯したり嗜好品を嗜みながら歩いたり、純粋にふざけたり愛犬が登場したりと様々ですが、一つの品という物質においては、鬼才的な判断力で幾つかの要素をこれでもかと混ぜ合わせることで表現されることが多いように想います。

 

モードの本場が得意とし特に技術面や美意識面ではフランスが専門的に培ってきた曲線美をあえて選ばず、工業的, 無機的, 無表情的ともいえる直線を採用することによって産まれるフレンチメゾンとしての違物感溢れる土台に載せられる動物の紋様や氏の衣装に身を包んだ彫像画が匂い立たせる一着としての個は、テキスタイルデザインや柄物という “ いわゆる ” な表現に属することを許さない、まるでこの世のちょっとした隙間に迷い込んでしまったかのような異世界感に溢れていますが、これもまた用いられる綿の蕩けるような質感と直線的な構築の歪みと秀逸な色調の成り立ちによって、結局のところ装うことを愛し愉しむ大人の男性に強く御提案したくてたまらない、これが布陣にあることで得られる人生における豊かさを想像すると口角が上がるのを抑えることができない一着でございます。

本品が産まれた期の氏の世界には様々な象徴要素がございましたが、動物紋様と彫像画の出で立ちはその代表的な存在の一つでしたので、それをあえて直線的な構築で可動域を広く配置し開襟仕様というとにかく寛いだ仕様によって仕上げられたこの一着を御馴染みの親愛なる穏やかなコレクター様の静謐な空間で目にした際その存在感に気圧され、ポケットの形状や袖の下部, 首回りの吸いつきなど細部に注視することで気付けるモード文化独自の遺伝子と申しますか、選ばなかったにも関わらず発揮されてしまう極めてささやかな曲線美と目が合った際に心を射抜かれました。

全ての要素において結果的に純然たるシャツジャケットという稀有な体を獲得したこの豪奢で秀麗で混沌とした一着にて、モロッコの避暑地しかり軽井沢の別荘しかり, 真昼の酒盛りしかり愛する女性とのボートしかり, 一人秘密の Bar しかり友人との宴しかり、人生を豊かに彩る様々な環境と瞬間を過ごして頂きたくて、たまりません。

 

 

 

 

 

 

 

1992s Jean Paul Gaultier cotton shirts jacket.

 

 

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