擬似的なディベート虚しく / Diary537
16.5.2018

 

 

 

例年に比べて潜思する機会が多いので、ああだろう、こうだろう、と心の中で推測と答え合わせを繰り返しておりまして、蓄えた経験や知識で正しく推量しようとする過程もまた至福の時間でありますので勝手ながら愉しませて頂いております。
そのようにして擬似的なディベートごっこが開催される機会が多いというのは、例年に比べて潜思する機会が多い、詰まるところ、例年以上に出逢いが多い、という極めて幸運な事実でありまして、然もややこしく思案を巡らせる正体の大部分というのは、80s ISSEY MIYAKEで御座います。ああだろう、こうだろうと推測と答え合わせを繰り返す内容というのはディテールの正体を究明するという無邪気な行いですが、そんなことはどうだっていい仄かなプロットに過ぎず、蓄えた経験や知識の外で辿り着く “ 素晴らしい衣服 ” という単純明快な着地点。さらにそのように着地する衣服というのはおおかた「コート」に分類されるものでして、同社,同氏が提唱する哲学というのをより明確に感じ取ることができる実現物であるように思います。そのような機会が多いのです、例年に増して。そう、80s ISSEY MIYAKEのコートというのは意義を挟む隙間もなく素晴らしい。これは紛れもない事実で御座います。ここにわたくしの一意見というのを僭越ながら置かせて頂くと、もっと爆発的な評価を獲得して良いのではないか(現時点で高い評価を得ているという事実のうえで)、安っぽい文句ですが純粋にそのように想うのであります。ヨーロッパ圏においても本国においてもクリエイターやデザイナー様に評価を得ている印象も拭えず、決然としたオーバーフィッティング、あまりにも美しいドレープ、和洋折衷の個体性、仕立ての良い1着の外套として、真髄を求める者にこそお認め頂きたいと。なんとも偉そうでな一意見でありまして、失礼にも不快なお気持ちにさせてしまいましたら申し訳ありません。

 

しかしながら、長年に渡り心を奪われてきた「コート」という区分、以外のステージで素晴らしい資質を放つ1着、この邂逅というのは今シーズン最も幸運であった出逢いのひとつで御座いました。同社においてもっとも心血を注いだとされる要素に「素材」があるのはご周知の通りと存じますが、引き続き日常への探求と快適性、何より “ 天然素材への追求 ” に渾身の力を込めた本作クリエイションライン「Plantation」。羊毛、綿、麻への礼讃。その無垢な資質への圧倒的追求。メインファブリックとした生地開発。同社の魅力が極限まで保存される「生地」という要素。その中で採択された “ 麻=リネン ” という素材。初見立ち会いの際、擬似的なディベートによる回答ではリネンに加えウール(羊毛)の混成を推測致しましたがおおきく裏切られ、占有するはリネンのみ。その軽快さと相反するような弾力のある強力な織り上げ。テーラードでありながら裏地を付けない選定と、無垢本来の勝負。ラペルは排除。背面のプリーツ。細やかな仕事。袖を通すと蓄えた情報や知識の外で辿り着く “ 素晴らしい衣服 ” という単純明快な着地点。

 

 

 

生地の縒れや、癖すら天然物のように美しく、質素でありますが、ここに色気と習慣性を備える技巧的な技というのには、咀嚼するたび、深く感服致します。

 

 

 

 

 

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80s Issey Miyake “ Plantation ” lapel less linen tailored jacket

 

 

 

 

 

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